衛生管理者は、事業場の衛生全般について管理を行います。
選任と報告
事業者は、業種を問わず、常時50人以上の労働者を使用する事業場ごとに所定の数の衛生管理者を選任しなければなりません。また、事業者は、選任すべき事由が発生した日から14日以内に選任し、遅滞なく選任報告書を所轄労働基準監督署長へ提出しなければなりません。衛生管理者が旅行、疾病、事故等の事由によって職務を行うことができないときは、代理者を選任しなければなりません。
衛生管理者の最低選任数

業種を問わず、常時50人以上の労働者が働いている場合、一定の規模に応じた人数以上の衛生管理者を選ぶ必要があるよ。
| 事業場の規模(常時使用する労働者数) | 最低選任数 |
| 50人以上 ~ 200人以下 | 1人 |
| 200人超(201人以上)~ 500人以下 | 2人 |
| 500人超(501人以上)~1,000人以下 | 3人 |
| 1,000人超(1,001人以上)~2,000人以下 | 4人 |
| 2,000人超(2,001人以上)~3,000人以下 | 5人 |
| 3,000人超(3,001人以上) | 6人 |

都道府県労働局長は、必要であると認めるとき地方労働審議会の議を経て、衛生管理者を選ぶ必要がない2つ以上の事業場が同じ地域にある場合、共同して衛生管理者を選任することを勧告できます。
専属と専任
衛生管理者は、専属である必要があります。ただし、2人以上選任する場合で、その中に労働衛生コンサルタントがいるときは、その労働衛生コンサルタントのうち1人について、専属である必要はありません。
〇衛生管理者 ●労働衛生コンサルタント
| 〇〇 | 2人とも専属 |
| 〇● | 〇は専属、●は専属でなくてもよい |
| 〇●● | 〇は専属、●のうち1人は専属でなくてもよい |

専属はその事業場にしか勤務していない従業員をいいます。
選任は衛生管理者の業務にだけ従拳している従業員をいいます。
ちなみに、労働衛生コンサルタントって何かな?

労働安全衛生法に基づく「国家資格」のひとつで、労働者の健康を守る専門家です。一部例外はあるものの、基本的に衛生管理者は社員、労働衛生コンサルタントは外部委託のイメージが分かりやすいですね。
専任
以下の事業場では、衛生管理者のうち少なくとも1人を専任とする必要があります。
①常時1,000人を超える労働者を使用する事業場
②常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働または一定の健康上有害な業務に常時30人以上の労働者を働かせている事業場
また、②の事業場のうち、坑内労働、多量の高熱物体(たとえば、溶融された鉱物など)を取り扱う業務および著しく暑熱(しょねつ)な場所における業務、有害放射線にさらされる業務等一定の業務に常時30人以上の労働者を働かせている場合、衛生管理者のうち1人を衛生工学衛生管理者免許を受けた者から選任しなければなりません。
選任
衛生管理者は下記表の業種の区分に応じ、それぞれの資格を有する者の中から選任します。
また、衛生管理者の職務は以下の通りです。
①総括安全衛生管理者が統括管理する職務のうち衛生に関する技術的事項の管理。
②少なくとも毎週1回作業場等を巡視し、設備、作業方法または衛生状態に有害のおそれがあるときは、直ちに労働者の健康障害を防止するため必要な措置を講じること。
| 業種 | 資格 |
| 製造業 ・化学工業 ・金属精錬業 ・機械器具製造業 ・食料品製造業 など 電気・ガス業 運送業、清掃業 鉱業、採石業、砂利採取業 建設業 畜産業、水産業 農林業(一部) | 第1種衛生管理者免許 医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント等 衛生工学衛生管理者免許 |
| 卸売業・小売業 飲食店、宿泊業 金融業、保険業 情報通信業 教育・研究機関 医療、福祉 など | 第1種衛生管理者免許 第2種衛生管理者免許 医師、歯科医師、労働衛生コンサルタント等 衛生工学衛生管理者免許 |
増員・解任
労働基準監督署長は、労働災害を防止するため必要があると認めるときは、事業者に対して衛生管理者の増員または解任を命じることができます。
まとめ(質疑応答)

労働者の健康を確保するため必要があると認めるとき、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をすることは、衛生管理者の業務?

いいえ。「労働者の健康を確保するため必要があると認めるとき、事業者に対し、労働者の健康管理等について必要な勧告をする」 という権限は 衛生管理者の業務ではなく、労働安全衛生法に基づく「産業医」や「都道府県労働局長(労働基準監督署長)」の権限 に属するものなの。
労働安全衛生法 第12条・第13条に基づき、衛生管理者の主な職務は以下となっていているの。
- 作業環境の衛生上の調査・点検
- 健康診断の実施・結果管理の補助
- 健康障害防止措置の実施(換気、保護具指導など)
- 労働者の健康保持増進のための措置の実施
- 労働衛生教育の実施
- 衛生に関する記録の作成・保存
- 安全衛生委員会への出席・報告
つまり、衛生管理者は 「事業者の指揮監督のもと、衛生管理実務を担う職務」 で、事業者に対して勧告を行う権限は持っていないのよ。

常時使用する労働者数が60人の旅館業の事業場では、第2種衛生管理者免許を有する者のうちから衛生管理者を選任することができる?

その通りよ。

常時600人の労働者を使用する製造業の事業場では、衛生管理者は3人以上選任しなければならないが、当該衛生管理者のうち 1人については、この事業場に専属ではない労働衛生コンサルタントのうちから選任することができる?

その通りよ。また、労働衛生コンサルタントは専属である必要はないの。

